MIDIで聴いてみる・2


C-Durを全ての調に移調した物をヴェルクマイスターで比較できます。
5度圏の順に並べてあります。シャープとフラットの数の変化と音色の変化を
聴き比べてみてください。

下の方には余談ですがベートーヴェンもあります。

同じ実験をケルナー、キルンベルガー、ラモーでもやってみます。しばらくお待ちください。

移動先
元データ
ヴェルクマイスターIII
標準音を移動した
415Hz
ただ移調したもの
ヴェルクマイスター
Nr.1
BWV846
C-Dur
G-Dur
D-Dur
A-Dur
E-Dur
H-Dur
Fis-Dur
Cis-Dur
As-Dur
Es-Dur
B-Dur
F-Dur

調律の手順は普通はCを出発点になされますが、それをたとえばHから始めますと、Hからとるそれぞれの音程はCからとる同じ音程と同じ音色になります。その状態でC-Durを弾くと、響きはCから合わせたときのCis-Durと相似になります。
こうすることで、絶対音高の心理的影響を捨象してそれぞれの調の持つ肌合いを比較することが出来ます。
また、絶対音高もまた無視できない要素であることにもお気づきになるかもしれません。たとえばAsで移調しただけの物なら耳にも心地よいのに、同じ所がCに移動した同じ環境では耳につらいとか、そういう部分も感じられることがままあります。

また、415Hzで聴く習慣のない方はそれだけでもおかしく聞こえる部分があるかもしれません。
縦、横、いろんな組み合わせで聴き比べてみてください。

Cis-Durで聴くプレリュードはここでは少々おかしな響きに聞こえますが、これがもともとのCis-Durのプレリュードを聴くとそうでもありません。それぞれの調について比べてみてください。そうしてみるとバッハがいかに巧みに調性の性格を把握し、しかも利用することが出来たのかが実感できます。

次回はh-moll、BWV869を取り上げたいと思います。フーガの主題には12音全てが現れて、しかも繋留音が多いため、その幅の違いの変化がどのような影響を及ぼすか確かめることが出来ます。

いずれにせよ、12の音程の調律法とそれに見合った作曲法でこれほどの色彩が獲得できることは利益こそあれ、害はないと思われます。

いずれ、モーツァルトやベートーヴェンについても比較をしてみましょう。(より古いものは言うに及ばず)
たとえば、ベートーヴェンの師であったもののレッスンをろくにしなかったハイドンは、キルンベルガーの著書を独習教材として与えています。この本に載っていることで間違っていることはない、しっかり学べと。その中に、作曲技法の他に、例の調律もでてきます。

いっぺんヴェルクマイスターIIIにあわせたピアノで月光ソナタ(cis-moll)を弾いてもらったことがあるのですが、光と影がコントラストを放ち、大変な力を秘めているのに気が付きました。MIDIで私が比較した限りではキルンベルガーのほうがバランスが良いように思われました。実用的なバランスを考えるとしかしナイトハルトのほうがよいようです。
とくにこのような音楽の場合、デュナーミックを工夫すると調子外れの音を返って旨く使うことが出来るのですが、MIDIのデータにそこまで細工をしてもいられませんので、その辺は想像力で補ってくださいませ。1楽章終わりに何度もでてくる上下の半音の動きを特に良く聴いてください。歴史的調律で演奏する場合、1楽章はもっと速いテンポがふさわしいと思います。

ベートーヴェン ソナタ14番cis-moll  平均律  ヴェルクマイスター  キルンベルガー  ナイトハルトIII

それぞれのテンパラメントの解説は近々追ってわかりやすく書きなおしますが、ナイトハルトはヴェルクマイスターの時代に彼と並んで調律界(?)のリーダー格でした。ヴェルクマイスターが黒鍵側をピタゴラス5度に配分し、白鍵側を中全音律もどきにしたのに対して、ナイトハルトはむしろ、純粋な中全音律にも、ピタゴラスにもこだわりませんでした。それぞれの特徴を残しつつ、あくまでも経験的にその間隔を工夫しています。3分の1ほどの5度はピタゴラス、もう3分の1は平均律の5度、残りが6分の1ピタゴラスコンマ狭めた5度です。キルンベルガーは白鍵側の中全音律と黒鍵側のピタゴラスを出来るだけ純粋に残そうとした形跡が伺えます。

さて、いきなり応用編の実例ばかり続きました。ぼちぼち古い素材にもさかのぼってみたいと思います。